佐野乾山を見る

佐野乾山の資料①

私が佐野乾山に興味を持ってから10年以上経ちましたが、佐野乾山をとりまく状況はそれほど変わっていません。その原因は、美術雑誌や真贋に関して書かれた本にあると思います。その多くが「黒に近いグレー」という扱いですからしょうがないと思います。コレクターの森川勇氏が林屋晴三氏に紹介されて佐野乾山に出会ったのが昭和34年ですから、すでに50年以上経っています。真贋事件というものは、発生当時はマスコミが盛んに取り上げるため必要以上に盛り上がりますが、それを過ぎると「あの騒ぎは何だったんだ？」ということが多いものです。
しかし、佐野乾山に関しては、住友先生などの先達のご努力も、大きな流れを作るには到っていないように感じます。私は、佐野乾山事件がこのまま風化してしまうことを危惧します。
他でも書いていますが、私の意見は「佐野乾山事件当時の佐野乾山で議論をすべき」というものです。というものの、50年も前の資料はほとんど残っておらず、当時のことを知るには難しい状況になっています。
そのため、ここで佐野乾山事件当時、議論された写真や文章を紹介し、当時の議論が風化してしまうことを少しでも防ぎたいと思います。
つい最近まで、そうは言っても著作権は50年経たないと切れないから．．．と思っていました。しかし、よく考えてみると佐野乾山当時の雑誌や書籍は旧法（昭和45年以前)の適用範囲であり、著作権の保護期間は30年であることに気付きました。（もし、法解釈に誤りがあればご指摘下さい）

１．新発見「佐野乾山」展の図録

まずは、佐野乾山事件を語る上ではずせない図録です。
この『新発見｢佐野乾山｣展』の表紙を飾った、｢槍梅四方花入｣が現存し、鑑賞できることを素直に喜びたいと思います。
｢藝術新潮｣主催の｢佐野乾山｣展を見てみましょう。

【序文】
ここ数年来、栃木県佐野市一帯より、尾形乾山の佐野時代（元文２～３年）の作陶といわれる作品ならびに制作メモと思われる｢佐野手控帖｣が発見され、古美術業界に大きな話題を投げている。
しかし、実際にそれらの作品を見る機会を得た人は意外に少ない。そして、噂話にひとしいような真贋論議が実物に則した研究に先走ってしまった。
これは関係者たちが、いままで公開しなかったためもあるが、一方、学者間の自由な研究発表を、美術行政の名のもとに阻害されていることも事実のようである。こうした秘密主義、ことなかれ主義の結果、古美術業界はいよいよ混迷に陥っている。
本誌はこうした現状を鑑みて、特に所有者たちに懇請して、新発見資料をひろく一般公開して、学者間のさらに自由な検討を期待し、なほ、識者の関心に応えたいと考えて、ここに｢佐野乾山｣展を企画した。あくまで厳正中立な態度で、この貴重な資料を世に紹介する次第である。

昭和３７年６月
新潮社｢藝術新潮｣編集部

４５年前の『新発見｢佐野乾山｣展』（於：白木屋）の開催主旨ですが、何と高い志なのでしょうか。このような編集者達がいた事を私達は誇りに思うべきでしょう。そして、４５年経った今も混沌としている｢佐野乾山｣の状況を反省すべきだと思います。

図録の作品の一部を縮小画像で紹介します。

【資料の閲覧の方法】 (著作権に関して他の解釈があるかも知れませんので、閲覧者を限らせて頂きます）
(現在中止しています）

上記、黄色枠内の『新発見の「佐野乾山」展』の図録をクリックしてください。（ファイルサイズは約１１MBです）
PDFファイルをダウンロードしたい場合は、図録の場所にカーソルを移動して右クリックで「対象ファイルに保存」をクリックして自分のPCに保存して下さい。
本ファイルはパスワードがかかっていますので、見たい方は、下記のメールアドレスに「資料のパスワード希望」というタイトルでメールを下さい。
メールを頂いた方には、パスワードを返送致します。
メールの送付先： Kenzan553@mbr.nifty.com

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