佐野乾山を見る
ここ数年来、栃木県佐野市一帯より、尾形乾山の佐野時代(元文2〜3年)の作陶といわれる作品ならびに制作メモと思われる「佐野手控帖」が発見され、古美術業界に大きな話題を投げている。 しかし、実際にそれらの作品を見る機会を得た人は意外に少ない。そして、噂話にひとしいような真贋論議が実物に則した研究に先走ってしまった。 これは関係者たちが、いままで公開しなかったためもあるが、一方、学者間の自由な研究発表を、美術行政の名のもとに阻害されていることも事実のようである。こうした秘密主義、ことなかれ主義の結果、古美術業界はいよいよ混迷に陥っている。 本誌はこうした現状を鑑みて、特に所有者たちに懇請して、新発見資料をひろく一般公開して、学者間のさらに自由な検討を期待し、なほ、識者の関心に応えたいと考えて、ここに「佐野乾山」展を企画した。あくまで厳正中立な態度で、この貴重な資料を世に紹介する次第である。 昭和37年6月 新潮社「藝術新潮」編集部 |
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