佐野乾山の科学的調査?

本当に科学的な調査?


松浦潤氏が編・著の本で、「日本のやきもの【鑑賞と鑑定】「第三巻 瀬戸・美濃・京焼 楽」」という本があります。氏は、ウィルソン氏と同様に以前から佐野乾山贋作説を唱えている現在の贋作派の代表的なお方です。
その本の中に「知られざる東工大鑑定」という記述があります。

『読者から手紙を貰った。その手紙は刊行されて間もない加藤誠軌(東工大名誉教授)編著「X線分光分析」(内田老鶴圃)に「佐野乾山」についての記事があると教えてくれた。さっそく取り寄せてみたところ、全く知らない驚くべき事実が書かれていた。何と東工大で「佐野乾山」の蛍光X線分光分析が行われていたのである。
昭和三十七年頃、二百余点の「佐野乾山」が新たに発見された。さらに「佐野手控帳」という覚書も見つかった。その当時蒐集家のM氏の依頼で(国立博物館の専門官H氏も同席した)著書がXRF装置で分析した。当時のXRF装置は大きな物体は測定できなかた。そこで、木綿針を数本束ねて焼き物を啄木鳥のようにつついてごく少量の上絵具を採取した。傷痕は漆と顔料で補修した。昔の顔料と現代の顔料を数十種類用意してそれらを標準にして定性分析をした。
分析の結果は、佐野乾山の絵具の顔料は非常に純粋で、昔にはあるはずがない顔料も検出した。分析結果M氏に伝えたが公表はしなかった。著名人士を巻き込んで賛否両論が国会にまで持ち出された「佐野乾山」は偽物であることがこの方法で科学的に証明された』

私はこの文章を読んで非常に奇異に感じました。「X線分光分析」は純粋な学術書です。
  ,海里茲Δ碧椶鯑匹狄佑硫拭鵑凌佑陶磁器に興味を持っているのでしょうか? 
  △修瞭磁器に興味を持っている人のうちの何%の人が佐野乾山に興味を持っているのでしょうか?
  佐野乾山に興味をもっている人のうちの何%の人がこの内容を陶磁関係者に手紙で知らせようと思うでしょうか?(しかもメールではなく手紙)
  い修靴董日本の多くの陶磁関係者の中から何%の人が松浦氏を選ぶのでしょうか?
以上の 銑い鬚垢戮橡たして松浦氏に手紙を出すというのはかなり確率の低いことのように思えます。

まあ美術や骨董の世界において、このような確率の非常に低い偶然は往々にして起こるので、詮索は止めましょう。
科学的な方法という内容の検証をしましょう。
加藤氏の書くように、この結論は、本当に科学的なものなのでしょうか? 結論からいうと全然科学的ではありません。

1)まずは、学術書でありながらこの佐野乾山の部分には解析データが付いていません。検証すべきデータが無いのに、昔にはあるはずがない顔料も検出した。などと言うのは、全く不適切です。本当にあるはずがない顔料ならばその物質を特定すべきです。

2)また、二百余点のうち数個を調査しただけで「佐野乾山は偽物である」などとどうして言えるのでしょうか? 例え調査結果で偽物と判断できたとしても(この方法では判断できませんが)科学者であれば、「調査したものは偽物である」としか言えないはずです。

3)XRF装置で科学的に調査しても「佐野乾山は偽物です」などというデータが出てくる訳ではありません。(笑)結局は、「検出した顔料が比較用の昔の顔料と違う」ということしか分かりません。そして、比較用に用意した昔の顔料は、江戸時代に使用された全ての顔料を用意している訳ではありません。(まじめにやろうとしたら、用意した数十種類の顔料が江戸時代に存在した顔料のすべてである(あるいはほとんどを網羅している)ことを証明する必要があります)

こんな実験結果で、どうして加藤氏は佐野乾山を偽物だと主張しているのでしょうか?

また、佐野乾山は「下絵付け」という手法で、焼き物の上に白化粧をほどこし、その上に絵具で絵を描いて、そしてその上に釉薬をかけています。「X線分光分析」ではごく少量の上絵具を採取した書かれていますが、「上絵付け」ではないので上絵具は採取できないのではないでしょうか? 単に上の釉薬を取っただけのようにも読めます。
いずれにしても、実験条件や測定データもない状況で、結論だけ書くことは、学術書にはそぐわない記載です。

いやいや、私の書いた内容などは元大学教授であるご本人がよくよくご存じのはずです。
分かっていながら書いたその意図は何なのでしょうね。


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