著書 | 真作派 | 贋作派 | 記 述 |
「真贋」 美と欲望の11章 白崎秀雄著 |
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*「佐野乾山」は、現在のところその贋作説に対して社会的にかなり有力な人々の真作論が存在している。即ちいわゆる贋作事件として終息したわけではなく、今後もなんらかの発展の可能性のあるケースであるといえる。 |
「東西贋作犯科長」 (月刊美術)長谷川公之著 |
○ | - | *森川勇氏が「佐野乾山こそホンモノであり、世上に流れている“真正乾山”なるものも7,8割はいけない」と主張したため、取り扱った先からキャンセルされる事を恐れた骨董屋が真贋の究明をあえて風化させたと言うべきか。 |
「佐野乾山の実像」他 住友慎一 ほか 著 |
○ | - | *佐野伝書である「陶磁製方」に記載された技法が、この作品の絵付けに如実に応用されているかを観察し、その結果、作品に佐野乾山特有の詩情と人間性が如何に表 現されているかを見ることが、わが国の芸術史上でも大変重要なことであると思う。 |
「真贋ものがたり」 三杉隆敏著 |
○ | - | *住友先生は、肯定論者の故青柳瑞穂先生に感化を受け、佐野乾山に関しては白紙でのぞむべきだと調査された。医学者として理論的な研究態度は立派だと感服する。また松崎氏は特に手控と小西文書をはじめとする資料との比較などをきっちりとし、しかもあらゆる可能性から考察しておられ、当時の私を含めての無責任な印象批評的なものとは異なっていると言える。 |
「芸術新潮」 1962年3月号、5月号 |
○ | - | *われわれは「佐野乾山」を、現代作のニセモノとするのは、ためにする謀略としか思えない。そして、「佐野乾山」を初代乾山の真作とみとめるかどうかは、美術史家による「佐野手控帖」の研究にまつというのが、正しい見方であろう。 |
「芸術新潮」 贋作 戦後美術史 1991年11月号 |
- | △ | *贋作説が半ば有利といった状態で、事件は忘れ去られたまま、すでに30年の歳月が流れた。 *否定派の1人、五島美術館学芸部長の竹内順一氏は、「とにかく新しい資料が出てきているのだから、真贋両派が互いの資料を公開して、同じ土俵に乗った上で研究を進めたい」 |
「やきもの鑑定入門」 出川直樹監修 芸術新潮編集部編 |
- | ○ | *この騒動で、世間は一層乾山鑑定の難しさを、ひいては古美術鑑定における奇々怪々に入り組んだ複雑さも強く印象付けられたものである。 *贋作論に立つ側からは、この陶器の作者や「手控」を偽造した人など名指しで犯人が指摘されたが、これらの人々からも強い反論が出て、そのまま膠着状態に陥った。 *マスコミもやがて熱気が冷めて取り上げることもなくなり、世間には佐野乾山は総て贋物、という漠然とした印象を残したまま尻切れトンボとなって今日に至っている。 |
「真贋・考」 松浦 潤著 |
- | ○ | *私のような素人が見ても、そのあざとくて安っぽい絵具の発色は、江戸時代の陶磁器にはない色であることは歴然である。 *手控え帳は新「佐野乾山」を真作と見せるための小道具として仕込まれたものである。ホンモノと見せるための状況証拠として演出されたものである。真作を主張した研究者に手控え帳をその根拠とした人が多かったのは、学者が文献に飛びつく弱点を突かれたためで、実にあっけなく贋作者の罠にひっかかってしまった。 |
「乾山焼入門」 リチャード・ウィルソン 小笠原佐江子著 |
- | ○ | *昭和37年には新佐野乾山事件が起きており、系統立てた、厳密な研究基準が示されていたならば、それは即座に否定されたはずのものであった。 *佐野逗留を示す作品ばかりか、鳴滝時代の作品へと遡り、筆画も光琳・乾山・宗達・其一、模倣のまた模倣もあり、近代になって公開された多くの資料が手本になったと考える。 |
「Bien」 Vol.24 瀬木慎一談 |
○ | - | *(佐野乾山の)存在は確実ですし、乾山本人が制作したものもそのうち過半だと思います。ただ贋作のようなものや、弟子がつくったものがそのなかに混入している可能性もあります。ですからその選別が問題でしょう。真相の究明は今そこまできていると思います。 *ですからあの絵付けはまさに乾山です。彼の絵と整合すると思います。 |
「芸術とスキャンダルの間」 戦後美術事件史 大島一洋著 |
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*その後、佐野乾山が古美術市場に現れることはほとんどない。日本陶磁協会と全国の古美術商との組織力が勝ったということだろう。 *けっきょく、うやむやのまま現在にいたっているわけだが、筆者がカラー図版で佐野乾山を見た限りで言えば、作品の出来にばらつきがありすぎる。松本清張説のように、弟子たちが、勝手にどんどんつくってしまったのかもしれない。それにしても不思議な事件である。 |
「真贋 尾形乾山の見極め」 渡邉達也著 |
○ | - | *学術的な調査や研究から外れて、日本陶磁協会に関わる贋作説者たちが、機関紙「陶説」に抹殺を意図したかのような執拗さで、徹底した贋作説を掲載したため、何も知らない一般の人は、さも当然のように、その贋作説を鵜呑みにする短絡的な興味本位の話題へと移行した。 |
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