●経緯


12)幻の真贋討論会

読売新聞と朝日放送によって岸和田市の展示品は汚名を投げかけられたままとなりました。
岸和田市の教育委員会や郷土資料館などの現場では、「この際しっかりと討論して反駁した方がよい」との意見が出、展示品に関する学術的な討論会を開催する方向で動いていました。
しかし、岸和田市の原市長は、楊根教授から「展示品の学術的価値を認める」との書簡をもらった事によって「事態は変わった」との判断を行い、討論会の開催には消極的でした。
それでも市の企画部は討論会の原案を作成しました。

●コーディネーター:細野耕三(作家:銅紅釉磁器研究家)
○参加者
*肯定派:落合莞爾氏(紀州文化振興会主宰)、新屋隆夫氏(陶磁研究家)、南宗明氏(陶芸家)
*反対派:大伴公馬(帝塚山学園短期大学心理学教授)、吉田宏志(大和文華館学芸部長)、岡泰正(神戸市立博物館学芸員)

以上のメンバーで関心のある市民500人が見守る公開の場でやろうとの計画でした。

このメンバーに対して紀州側は、反対しました。

〔反対理由〕
1)反対派の3名は陶磁史の専門家ではない
→この3名は陶磁器界の代表ではないため役不足。
2)この3名には実物を眼前に置いて論ずるという態度が欠けている


〔提案〕
*読売新聞、朝日放送に「各2〜3名ずつ、誰でもよいから専門家を連れてくること」を要求する。
→ この両者は「複数の専門家(匿名)が疑義を持っている」ことを理由に、その意見を尊重しない岸和田市の行政姿勢を攻撃した。その専門家を出さないと筋が通らない。

予想通り、反対派の3名は欠席の意思が届けられました。岸和田市としては楊根教授の返信をもって"鑑定問題"は決着というスタンスのようであるため、落合氏は2月中旬に原市長と会見し討論会の開催を主張しました。
しかし、結局岸和田市は2月14日正式に討論会の開催中止を発表しました。紀州側の抗議に対して岸和田市主催で、2月26日記者クラブにおいて紀州文化振興会として展示品に関する研究成果を発表する事になりました。

●発表の内容
1)楊根教授の鑑定問題に関して
@平成2年10月、和歌山における鑑定風景の写真
A平成3年4月、楊根教授から「貴会所蔵は明代真品」という書簡
B平成3年10月付けの楊根教授の鑑定書

2)葵紋磁器に関する疑義に関して
@長保寺旧蔵の元禄2年書付けある「華厳経変相図」とその箱
A日光東照宮の朝鮮鐘の葵文と「華厳経変相図」の表装の葵紋との類似
B元禄10年、将軍綱吉の下げ渡し品の老中覚え書(御朱印書形式)
C元禄10年、将軍下渡品をめぐる歴史的背景の小論
D河島達郎の鑑定書と「少なくとも100年以上経過しており、150年か250年か、それは分からないが近年の作ではない」という説明書

この発表には記者やカメラマンが15,6人が集まりました。この記者会見に関しての報道は、

○毎日新聞系のMBSだけが夕刻のニュースで約40秒放送
「大阪岸和田市が去年秋、陶磁器展に展示した作品が、最近作られた模作品の疑いが強いと大学の研究者から指摘されている問題で、この陶磁器の所有者が反論しました。
問題となっているのは中国の明時代や李氏朝鮮時代の陶磁器として展示された34点です。今日会見した陶磁器の所有者は、模索品とされた作品の1つについて、民間の施設で年代を測定してもらった結果、少なくとも100年以上経っており、最近の作品ではないと判った、と主張しました。
これについて、模索品と指摘している研究者は、さらに第3者による鑑定を行うべきだと話しています。」

○10月28日 産経新聞
「岸和田市では公開討論会を検討していたが、批判者が出席できないといってきたので中止した」と報道

○読売、朝日は全くの無視。

これを以って岸和田市展示会をめぐる真贋騒動は、ひとまず終結しました。


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