●論点

●論争の中でポイントとなるいくつかに関して検討してみます。

*下に書いたように、読売新聞・朝日放送が主張している2点はいずれも的外れであることが分かります。


1)展示会では必ず公的機関で鑑定をしているのか?

*読売新聞も朝日放送も岸和田市が展示会の前に公的機関の鑑定を受けなかった事を非難しています。では、このような展示会では必ず公的機関で鑑定を行うというのは本当なのでしょうか?


(結論):うそです

(実例)

日時

名称

(再)鑑定の有無

概要

昭和53年 安宅コレクションの展覧会
(京都国立博物館)

×

法化壺の生産地を「景徳鎮」と表示していた。これは、当時国立東京博物館にいた長谷部楽爾(現出光美術館理事)の「生産地は確定できない」という説に反し、疑義が生じる。公的権威による疑義がある以上読売・毎日の理論では、「再鑑定が必要のはず」だが行われていない。
昭和57年 海のシルクロード展
(神戸市立博物館)

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中国の明・清代の陶磁器が出品されている。三杉隆敏が解説を書いているが、これと言って正式鑑定はしていないが、誰も問題にしなかった。
平成4年 蘇州博物院展
(東京都江東区)

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読売新聞主催であるにも関わらず、古陶磁で、まあまあといえるものは明初の釉裏紅など数点で、東京のどこの美術館にもある類であった。残りは、清代の民窯品だった。それらの他に販売用の物産をどっさり並べ、入場料を1,000円を取った。
東京芸術大学の助教授が選定したが、公的機関の鑑定は受けていない。
岸和田事件に沿って考えると、「公共の会館で展示したものを区民が見て中国陶磁の名品と思い込んだら大事だ。また入場料を取って大問題だ」となるべき問題。
平成4年 北京故宮展
(上野東京都美術館)

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大手古陶磁業者である繭山竜泉堂出身の西山康彦が図録の解説を行った。その図録の名称、年代に疑義のあるものが何点かあった。読売新聞の主張では「都民の金を取り、間違った解説を行って観客を惑わした恐れがある。再鑑定すべき。」となる。



2)展示品は台湾製であるとの主張がなされているが、台湾で展示品のような偽物が作られているのか?

(結論):作られていません

*作家で銅紅釉磁器研究家である細野耕三氏と読売坪井記者と貿易陶磁の大家である三杉敏隆氏の会話で分かります。

読売坪井記者

細野氏

大伴公馬先生が台湾だというもんだから、台湾製だと思ったのですが、細野先生はどう思われますか? 柿右衛門は、いま一個7千円が原価だそうです。それを昔の方法通りに作るとすると、17万円以上かかるそうです。だからやらない。
−−−−−? 昔とは、やきものは、胎土も釉薬も違うんです。それを昔通りのやり方で贋作を作ろうとすると、えらくコストがかかる。だから最低1千個くらいは造らないと、勘定があわないんです。
それでは、細野先生はあれは台湾製ではないと? 台湾ではあの土がありません。だからいま台湾で作っているものは、伊万里で生地を焼いて、白焼のまま台湾へ運び、台中あたりの家内工業で色絵を付けているんです −−−− 釉薬も彩料も昔のものとは違う。絵具にすぎません。最近日本の骨董雑誌にそうして焼いた台湾ものの広告が出ていますが、誰も見誤ることはありませんよ。岸和田の展示品とは雲泥の差があります。


 

三杉氏

細野氏

細野先生。あれはやはり、台湾製のようですね。 いや、台湾にはあんな土はありませんよ。伊万里の白焼を輸入して絵付けだけしているほどですから。
いや、げんに台湾で、絵付けを指導してきたという人を知っています。実は、−−− 以前その方から聞いたことがあります。
(上記の翌日の会話) 九谷焼をやっている金沢の利岡晃さんに改めて聞きなおしてみました。そしたら、自分は台湾へ指導にいったり、人を呼んできて日本で勉強させたりしたが、台湾では技術が低くて、とてもあのようなものは無理だといわれました。台湾説はこれで完全に消えました。私はこの件から降ります。

 


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