大阪府岸和田市制施行70周年記念
「東洋の官窯陶磁器展」
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●染付辰砂・蘭草文・壺
「秋草の手」こそ李朝陶磁の代表とは、大正以来ことあるごとにいわれてきた。たしかに、わずかに暖かい色を帯びた白磁の肌に描かれた草花の嫋嫋たる風情は、美意識というものより、もっと直接に日本人の感情に訴えるものがある。
日韓両国ともに、「秋草の手」は白磁に染付で野草を描いたもので、その製作年代も金沙時代(18世紀の初頭)以後というのが従来の通説であった。
実際には、この手は本来四君子を省略した”蘭菊図”が便化したもので、淵源は李朝初期(15世紀)に遡る。彩絵も、葉や茎を染付で描き、花弁を辰砂で表すのが初期の御窯では常套であった。そのことを本品は明確に証明している。金沙里の御窯で、王宮を飾るべく焼かれた壺である。
2.李朝陶磁器 (朝鮮通信使が伝来した李朝の逸品)

〔解説〕
一色崇美 落合莞爾 : 紀州文化振興会主宰 東洋史研究家 )

染付辰砂・蘭草文・面取壷
これも御窯の秋草の手であるが、年代は上記作品より古く、李朝初期に遡るものと考えられる。それは初期の特徴である高台脇のヤマ傷(窯中における亀裂)があるからである。欄菊に怪石を配したの文様は中国に発祥する文人画の伝統に忠実でありながら、画風はこなれてみごとである。いったい李朝の工芸は、初期に遡るほど芸術性は豊かで作行も丁寧なことが、はっきりした特徴となっている。
李朝初期には窯が多かったが、その当時の御窯は金沙里のある広州にあったものと考えられる。

金彩染付・葵紋・四君子文・大壺
朝鮮通信使の来朝は前後12回に及ぶ。その最盛期は元禄から享保にかけてであろう。以後しだいに簡略化され、最後の通信使である家斉の将軍就職慶賀使(1811年)は、日本側の意向で20年以上も延ばし延ばしにした後、ようやく迎えられた。
この壺は特に金彩の葵御紋を焼き付けて、将軍に対する敬意を示している。作行からみて18世紀の末頃で、現在の分院里にあった分院御窯の作品である。
染付で胴部に梅、竹、頚部に菊を表すのをみても、四君子文様の一種であることが分かる。
鉄辰砂・蓮花文・八角壺
辰砂とは、酸化銅の上釉の下に文様を施しておいて窯の中で還元炎で焼く。うまくいけば鮮烈な紅色になるが、温度が800度を越すと銅釉は蒸発しようとし、一方器胎は1200度を越さないと酸化しないから、これを両立させるのがたいへんである。
この矛盾を名工が乗り切ることができた時期は、中国では明代時期だが、同じころ朝鮮王朝も建国の初期であった。中国の影響はだだちに朝鮮半島に伝わるから、辰砂の名品は初期に集中しているが今まではまったく知られてこなかった。
これは金沙里の辰砂白磁である。絵付、器胎、面取技術、発色すべての面で、御窯とはいかなるものかを物語っている。
白磁鉄絵・陽刻・葵紋付・仏像十二支文・大水注
朝鮮王国の贈呈品には、仏教関係のものが多い。日本が仏教国であると強く意識しているところがある。
十二支の動物は薬師の十二神将を表現したもので、その陽刻はきわめて鋭く姿態も絶妙である。これに比べると仏像がわれわれの眼にはやや異態で、どこか奇異に映じる。この仏像は釈迦と薬師であるが、儒教国になって時日が経った朝鮮では仏像の表現が退化したのか、このような変化が生じた。
目跡はいわゆる貝高台で、砂や土の代わりに貝を用いて作行の丁寧さを誇っている、分院里の時代の御窯作品である。
鉄砂釉を施すには、釉上の場合と釉裏に描くものがある。本品のような釉上鉄絵は御窯に多く、これまで知られてこなかった。
釉上鉄砂・虎鷺文・壺
これは金沙里の末期ころ、わが国では享保前後のものと考えられる。絵柄は朝鮮半島の人々が親しみ敬うホラギ(猛虎)で、裏面は鷺が蓮の葉に乗っている。
これは李朝民画のパターンの一つと思われるが、李朝陶磁にはこのほかにも民画から採ったものが極めて多い。
釉上に施された鉄砂釉は、窯中で流れ出して朦朧たる味わいをかもし出す。酸化還元の妙により鉄釉は変化し、結晶の析出による濃褐色から飴色黄色と各段階にわたり、変幻極まりない。この種の釉は中国にもなく、李朝特有のものである。濃淡に富む変化のために最も声価の高い中国明初の宣徳年間の染付にも匹敵する力量がある。
釉下の鉄砂釉の場合、色調は緑色を帯び暗晦で変化に乏しいから、御窯のものには釉上がほとんどである。
最大高:39.5cm 最大径:39.1cm
最大高:24.6cm 最大径:29.2cm
最大高:29.0cm 最大径:25.4cm
最大高:39.0cm 最大径:39.0cm
最大高:31.6cm 最大径:26.6cm
最大高:28.6cm 最大径:27.1cm
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