●経緯


3)読売新聞岸和田在住 K坂記者からの電話

●11月8日に東京の落合事務所にK坂記者から電話がかかってきました

青字は落合氏のコメント

*K坂記者には、組織末端者の悲哀がある。11月3日に落合事務所に電話をかけてきた時には、
「新屋先生からいろいろお聞きして、自分としては納得しました」と言っていたにも関わらず、以下に書くようにコメント内容が変化しています。内部、外部からいろいろと圧力があったようです。

K坂記者

落合氏

落合さん。今度の展示品の中国ものは、結局すべて乾隆時代の倣古なんですね。
今回の展示品の来歴に関しては、会で「乾隆帝の秘宝」という小冊子を出して公開している。今回の展示品には倣古品の類はない。
これはひょっとして読売の背後にいる『闇の勢力』が申し出た”一種の取引”ではないか?展示品を「官窯の真品」とは認めたくないと頑張る『闇の勢力』が、「まるきりの贋物というのではなく、乾隆時代の倣古品ということにして、今回は手を打とう」と謎を掛けたのか?
K坂を利用してそれを紀州にもち掛けさせた。それを落合氏がにべもなく拒否したので、一気に紙上攻撃の火蓋を切ったのだろう。
君は何を言っているんだ。だいたい、うちの本を読みましたか?
いや、まだ読んでいないんですが −−− それはともかくとしまして −−− 展示品の年代はそんなに古いものじゃないと−−−
だけど「乾隆帝の秘宝」をちゃんと読んだら、そんな質問が出る筈ないじゃないか。取材するならあの小冊子位はしっかり読んでくるのが当然だよ。そりゃ、私だって自分が絶対に正しいとはいわない。しかし自分なりに推理を重ねてきて、一応の結論に達したんだ。それを否定するならそれなりの理論を以ってしたらどうだ!
それまで、努めて慇懃に対応してきたが、K坂記者の見当外れの先入観が、自分の著書を読んでこない職務上の怠慢からくると感じたので、本来の落合流の話し方になった。
取材の順番を君は間違えているよ。要するに自称専門家がいろいろ中傷したんだろ −−− だが、その専門家はウチの本をちゃんと読んでくれたのかね。−−− 僕は実物が紀州にあったことから出発して、これはいったい何だろうと思い、そこから出発して長年研究を重ねた上であの仮説を立てたんだ。しかも著書という形でそれを世に公開してきた。−−− その内容に批判があるなら、論文でも書簡でもいいから、理論的に反駁してくれるのが専門家としての筋道だろう?
学芸員に匿名でコメントせよと言い、彼らに言うだけ言わせてそれを記事にする。こうすればどんな虚報でもでっちあげられる。
−−−−−−
君も今回のことを記事にしたいのなら、ともかくぼくの取材をきっちり済ますのが筋道だよ。そしてぼくを取材するときは、不出来だろうがぼくの著書をひとまず読んで、そこから始めるのが筋じゃないか。そういうきちんとした筋道の取材を怠っておいて、不用意な記事を書くと許さんよ。
それはともかく、疑問を言う人がいる以上 −−− 何が何でも権威に再鑑定をさすべきだ。
これでは取材ではなく、宣戦の布告ではないか?
市が再鑑定を拒否する態度がとにかくけしからん。
ことの真相はK坂の職務怠慢ではなかった。この時すでに坪井などから展示品に対する偏見を刷り込まれていた。「ダメなものはダメ」式の程度の低い中傷から一歩も出ていないのは受け売りだからである。
展示会である以上、観客からいろんな反応があって当然だろう。それに謙虚に耳を傾けることはいいが、いちいち対応するわけにもいかん。おかしいという人がいるのなら、その論拠を詳しく聞いて具体的に疑問点を指摘して下さい。
いや、とにかく −−− 何もかも全体的にあやしいというんです。そもそも展示会をするのに、ちゃんとした公的権威の鑑定を取らなかったのがおかしい。
ちゃんとした公的権威とは何ですか?
博物館とは大学とか、そういったところの研究員とか −−− 要するに専門家です。
博物館の学芸員を権威というのですか、読売さんは? そう誤解している人もいるが、あれは図書館では司書にあたる職位で、短大の履修科目が受験免除になるくらいの軽い資格だ。大学で何十時間か聴講を受けたら誰にでも与えられる。とにかく修士なら無条件で学芸員の資格があるというんだぜ −−− このあいだ戸栗美術館に行って、戸栗さんにおたくでは誰が学芸員ですかときいたら、ここにいる事務員も全員がそうだといっていた。6人位いたかなあ。
−−−−−−
都合が悪くなると、K坂記者は黙る。
そりゃなかには長年まじめに個人研究をつんだ人もいるだろう。しかし、学芸員は展示などの事業活動を補助するのが本業だ。研究活動が本業じゃないから、当然に学力があるものではない。それを"公的権威”とまで強調するのはいかがなもんかなあ。
大学の先生はどうですか?
どこの大学に骨董学という分野の専攻者がいるのかね? 考古学は文学部の史学科のごく一部だし、6世紀以前を主として対象としている。それに考古学は与えられた物的資料から最大限可能な歴史的仮説を組み立てる学問だぜ。文物の真贋を鑑定するための学問ではない −−− 他に近世以後の文物の科学的分析を対象にしている学部はない。美術史科も文学部のごく一部だから、人材は寥々たるありさまで古陶磁には手が回らない −−− だが、さすがに中国の北京大学には陶磁研究所ができている。読売の判断では北京大学の教授は権威に入らないのかね?
−−− それより −−− 日本の権威という意味ですよ
K坂が会話中で頻りに「権威、権威」と強調することに落合は気がついた。誰か特定の自称”権威”が、岸和田市展で無視されたことが気に食わず読売を焚きつけているようだ。
国立博物館や研究施設にいる研究官や文部技官はたしかに専門家だけど、人数は少ない。そのなかでも自他ともに権威といえる人が何人いますか? 公共展示会をやる毎に、その人たちにいちいち鑑定して貰っていると、君たちは言うのかね?
−−− −−−
K坂は例によって答えない。
古陶磁の鑑定なんて、現状の日本では学者が権威を振りかざせる世界じゃない。それは当の学者が一番よく知っているよ。取材してきてごらん。それよりもむしろ業者のなかに得意分野について研究している人がいる −−− だが一番熱心にまた真面目に研究しているのは、たいていの場合そのコレクターだよ −−− むろん我田引水や手前味噌の場合もあるだろう。しかし研究には何といっても集中力が必要だから、外部から眺めただけの学者の鑑定が、必ずしも正しいとはいえない。また商人は打算を優先して当然だから、いくら目利きであっても商人の鑑定はそのまま正確には受け取れない。このことは業界人なら誰でも知っている −−− それに新屋隆夫を上回る古陶磁研究者がざらにいるとでもいうんかね、君は?
楊根さんや新屋さんでなく、市が主催するからには、もっと外部の −−− 第三者の鑑定が必要じゃないですか?
かりに君のいう通りだとしても、じゃあ第三者をどう定義するのかね、君は? −−− これが品物の売買なら、当事者以外が第三者だが、この場合は売買ではない。モノの貸借関係ならば市側と紀州側が当事者で、その外部にいる新屋や楊根は第三者だ −−− この場合のように、真贋や年代観の論争の場合には、双方から等距離にいる人などいないから、世間は賛否の両派に分かれてしまい、第三者はあり得ないよ。
ふだんの落合流が出た。こうして論理的にたたみかけると、K坂は詰まってしまった。
それはともかく −−− おかしいと指摘する人がいる以上 −−−
K坂の話は必ず堂々巡りしてこの点に戻ってくる。読売の社会部は贋作説で固まっていることは、最早はっきりした。だが、その根拠(といってもしょせん間違いなのだが)については自分らは確信しておらず、他人に言われるままなのだ。言い換えれば「展示品はすべておかしいと指摘する某専門家」が外部から読売を動かしている。名を隠して”権威”を自認している某専門家とは具体的に誰だろうか?
いい加減にしろ。誰が中傷しているかしらんが、一方的な話ばかり聞いていては公正を欠くぜ。読売なら取材はきちんと筋を通して双方に公平にしろよ −−− ぼくはそのうち、マスコミや記者をテーマにしたノン・フィクションを書くつもりだ。これを逆取材だと思ってくれてもいい。
それはどういうことですか?
K坂が一瞬、ギクっとしたのは電話でも判った。
いいですよ。どうでもして下さい。
不貞腐れ気味に言った。
とにかく、展示品に関して疑問点を具体的にご指摘して頂けたら、いちいち明確に答えましょう。それをしないような漠然とした中傷なら、その専門家の実名を明かしなさい。堂々と論争しましょう。こちらはいつでも受けて立つから、早く相手を土俵に乗せろ。
へぇ〜。じゃ相手が実名を出すなら、記事にしてもいいですか?
読売はすでに記事にするハラを固めている。落合は緊張した。
いいですよ。だがその前に必ずこちらに反論させろよ。公平な論争なら当方も望むところです。中傷屋の疑義をよく聞いて、堂々と反論させて貰いましょう。論争はオープンにして、それを読売さんが大いに記事にしてくれ。
−−−−−
K坂は返答しなかった。何を考えているんだ、読売は。落合は再びそういかぶった。

 


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